かつて、こんなに夜明けを待ったことはないと思う。
結局、浅い眠りしか得られなかったが、やっぱり
「大東行きの船なう!」
と思うと、覚醒してしまう。とは言え、船の縦揺れをずっと感じているのはつらたんなので、本当に、夜明けが待ち遠しかった。
今回の航海は北大東島先行で、北大東島に寄ってから南大東島に到着する。ということは、なんと、クレーンイベントが2回も見られるのである!
6:40、遠くに島影が見える。夜中だったのもあるが、航海中ずーーーっと何も見えない海だったので、陸が見えたという事実に安堵した。
6:45。ふとスマホを確認してみると、電波が入っていた。島は近い。今日び、何時間も通信できない状態というのは滅多にないことなので、ようやく連絡できる安心感を得る。
7:00前。北大東島に近づくと、断崖絶壁に打ちつける波しぶきがすごい。島の岸壁に沿って波が走り、大きくうねっている。東映の10倍以上はありそうな波だ。断崖を乗り越えて、上の陸地にまで到達している。ここ最近、天候は安定していたはずだが、これがふつうなのか?
けっこうでかめの音量で、船内放送が流れる。「北大東島に到着するので、降りる人は降りてください」という旨の内容だった。
よし!このままデッキで接岸シーンを見てみよう!野次馬だ!
デッキには北大東島で降りる人と、管理人と同じように野次馬らしい人がパラパラといた。
ミストのような小雨が降ったかと思うと、虹が現れた。こいつは幸先がよい。
しかし、そもそも、なぜクレーンで上陸なのか。
それは島の周りの水深が深すぎて、大きな港が作れないためである。一目で分かる地形は、南大東島気象台のHP参照。
ふつう陸は海に続いてだんだんと深くなっていくため、防波堤など建設しようもあるのだが、大東島は断崖絶壁の島で、陸から海へはすぐにストン、と深くなっているのである。島を囲む海はその深さ2000m、もう少し沖へ出ると4000m。そんな海で人間の力では防波堤なんて建設できないのである。
そのため、島を削る方法(初めて知ったときはなるほど!と、とても感動した)で港が作られている場所があるが、ここは漁船など小さめの船専用で、貨客船は入港できないようである。
以上の理由で、現在でも港(防波堤)がない場所に船を寄せるしかないのである。波を避ける防波堤がないので、当然、太平洋ど真ん中の高い波が直接船に押し寄せてくる。すると、ふつうの船のようにピッタリと陸につけることは不可能で、陸と船と10mほどスペースを空けた状態での着岸となる。
あのクレーンが待機している場所に向かう。防波堤も何もない港は初めてみる。
係留作業は、陸と船をつなぎ、船と海に浮かぶブイをつなぐ。それをそれぞれ船首と船尾で行うのだ。
7:05、「だいとう」が定位置に着くと、まずは陸からおもむろに、クレーンで小型船が海へ降ろされた。
何するん?と思っていると、小型船が適度な位置に着いたところで、「だいとう」から海に向かって大砲のようなもので細めのロープが発射された。それを小型船が拾う。細めのロープは、本体である太めのロープにつながっている。その太いほうを海に浮かんでいるブイに固定する、というシステムだ。小型船は、作業を終えるとまたクレーンで引き上げられ陸に戻っていく。
陸のほうは陸の方で、これまた「だいとう」からロープが発射される。人間が投げて届く範囲ではないため、「発射」される。
構えて、
発射!
おもり(黄色いもの)につながったロープが、陸に向かって一直線!(写真は南大東島での様子)
陸担当の人がロープを拾う。引き揚げたロープの先に、本体の太いロープがついている。
それを地面から出ているフックみたいなもの(港で海の男が片足乗せてポーズを取ってそうなやつ)にひっかけ、しっかりと固定する。
10分くらいで、最終的に、このように係留された。
作業開始から常に、船は波で上下するし、左右の傾きもすごい。こんな中での作業は、あっぱれとしか言いようがない。ずーっと作業に見とれていた。
大東島ではどんな感じで船が係留されるのか初めて知り、感動した。
係留が終わると、陸で待っている銀色のゴンドラが、クレーンにつながれる。
クレーンで、人間用のゴンドラがブーーーン!って感じで運ばれてきた。
定員10名ほどの乗り物だろうか。
北大東島で降りる人たちが、手荷物を持って乗り込む。
「だいとう」から弧を描くように陸に向かい、着地。30秒ほどだろうか、一瞬の出来事だった。
次は、貨物の積み下ろしと積み上げだ。最初に、クレーンゲームのようなフックが飛んできた。
フックの先をコンテナに固定する。
コンテナに鎖が固定されると、クレーンで持ち上げられ宙を飛んでいく。
次々とコンテナがクレーンで積み降ろされる。
フックの先が他の車両等にぶつからないよう気を使ったり、技術も必要で、大変な作業だ。
車両も同じように固定されて、
宙を飛んでいく。車両がおもちゃのように見える。
器用に陸に着地させ、フックが外される。
この間、クレーンを操作する人、貨物をクレーンにつなげる人、クレーンから外す人、安全確認をする人など、すごいチームプレーで作業がこなされていく。
クレーンについては、ダイナミックかつ繊細な操作が必要となるだろう。
本当にすごいとしか言いようがない。プロの海の男たちの仕事に拍手‼︎
この時点で7:20だった。荷役は続きそうなので、朝ごはんを食べていよう。昨夜は「真夜中の船でカップラーメン♪」が出来なかったので、今日の朝ごはんにもやしラーメンを食べることにした。
朝ごはんを食べてひと眠りし、デッキに上がるとまだ作業が続いていた。時計は9:35。
那覇から島へ仕事に来たというおじさんと話した。夜、船の揺れがすごかったですね、と言うと、これは全然ふつうだと教えてくれた。今のこの揺れも島に押し寄せる荒波も、通常運転らしい。おじさんは荷役を見るのが面白くて、何回も見ているとのこと。
物流、って感じだ。
作業員の人たちもゴンドラで飛んでいた。
最後は船が離れるために、係留してあったロープを外す作業。
9:40、また小型船がクレーンにつながれる。
海に降ろされると、ブイにつながれているロープを外しに向かう。
日が高くなってきた。大東島の海は全く濁りがなく、透き通っている。きれいすぎてこわい。他のどの離島の海の色とも違う。
作業を終えると、また小型船が陸に戻っていく。
9:45。「だいとう」が係留していたロープを引き上げると、小型船がクレーンで上陸するのを待たずに、南大東島へ向けて出発。
北大東島を離れる。荷物の量によるだろうが、北大東島へ着岸している時間は2時間半以上だった。その間、ずっと荷役作業は続いていたようだ。本当に、着岸するだけでこれだけの大ごとになるのが大東島。
船が島から離れても、興奮冷めやらぬ。本当に、見れて良かった。眠くても絶対見るべき!
ありがとう、北大東島!今回は立ち寄っただけだったが、いつか北にも来よう!あばよーい!
次はいよいよ南大東島へ向かう。
■この記事のシリーズは、こちらからリンクできます。
【南大東島①】(予約の章)
【南大東島②】(準備編)
【南大東島③】(船旅の章)
【南大東島④】(北大東島寄港の章)※この記事はこれ
【南大東島⑤】(南大東島上陸の章)
【南大東島⑥】(地底湖探検の章)
【南大東島⑦】(星野洞の章)
【南大東島⑧】(夕日と珍味の章)
【南大東島⑨】(民宿きらく家の章)
【南大東島⑩】(地方気象台の章)
【南大東島⑪】(産業まつりの章)
【南大東島⑫】(移動手段情報の章)
【南大東島⑬】(バイクで島を一周の章~前編)…大東神社、大東そば、南大東漁港
【南大東島⑭】(バイクで島を一周の章~中編)…バリバリ岩、本場海岸、オヒルギ群落
【南大東島⑮】(バイクで島を一周の章~後編)…秋葉神社、日の丸山展望台、海軍棒など
【南大東島⑯】(最終日の章)
【南大東島⑰】(旅立ちの唄~十五の春~の章)
(おまけ・南大東島と「進撃の巨人」が似ている件)